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眠い目を擦りながら階段を下り、リビングルームのソファに座る。

「昨日も遅かったの?」
「あぁ・・」

妻が運んできてくれた珈琲を一口飲んでから、ガラスのテーブルに置かれたノートパソコンを開き、スイッチを入れた。習慣のようにFXのチャートを立ち上げる。

「な、何だぁ?一体全体、何があったんだぁ?」

一瞬、我が目を疑ってしまった。米ドル円が2円近くも暴落しているではないか。(何か重要な指標でも出たのか・・)

「何かあったの?」

体全体で焦りを表していたのだろう。心配げに妻が声をかけてきた。

「う~ん、米ドル円が急落してるんだぁ」
「そうなの・・」

FXに無関心な妻にとっては、為替よりも愛犬のタマの方がよほど気にかかるようだ。

「最近、タマの毛が抜けて、掃除が大変なのよ」
「ああ」
「ねぇ、聞いてるの?」
「ああ」
「もう、全然、聞いていないんだから。タマの散歩ついでに、近所の佐藤さんの家にお邪魔してきますからね」
「ああ」

妻がタマを連れて出掛けてからが、大変だった。(何、何・・黒田総裁が・・)

まぁ、ざっとこんな調子で始まった今日の相場は、本当に驚愕でした。

衆議院財務金融委員会において、黒田総裁がまさかの円安牽制発言をしたのです。実質実効レートで「ここからの円安は考えにくい」との認識を示しました。

腐っても鯛の日銀総裁がこのような発言をなされれば、そりゃ~円高になりますよね。

確かに、先月末からの急激な円安傾向に警戒感が強くなってきたことは認めますが、かと言ってこのようなフェイント気味の発言をされるとは・・・。

先日も都内で開かれた日銀主催の国際会議で、「飛べるかどうかを疑った瞬間に、永遠に飛べなくなってしまう」とピーターパン物語に出てくる言葉を引き合いに出し、物価や景気が思い通りにいかなくても、世界の中央銀行が「前向きな姿勢と確信」をもって政策を推し進めれば物事は成し遂げられることを力説していたのに・・。

本当に、開いた口が塞がらない、とはこのことを言うのでしょうね。

よ~く調べて見ると、今回の発言は民主党からの誘導質問に黒田総裁が口を滑らせてしまった結果だと言われていますが・・これで、総裁自身が125円を意識していることが明るみ出たようですね。つまり、125円が「黒田ライン」ということなのでしょう。

そして、それを証明するかのように、すかさず甘利経済財政担当相が、

「あれは『黒田バズーカ』第3弾ではない。若干、趣旨が曲解されて市場に伝わったようだ」

との弁解とも取れる発言をしました。

要人からこのような発言が出てくる時は、要注意ですね。特に為替相場は、政治的な発言に一喜一憂しますから。

今日の黒田発言は、「年末までに130円に到達するだろう」と考えていた私の予想にも多大な影響を与えるものでしたが、ここは一先ず冷静に対処したいと思います。

そうして心を落ち着けていると、「ただいまぁ~」という声と同時にタマがリビングルームに飛び込んで来た。

「FXは、落ち着いたの?」

妻の知人である佐藤さん宅で御馳走を頂いてきたのか、妻は全く呑気なものである。

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